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友人の話「手袋」
友人の視点で書きます。
文章に出てくる俺≠投稿主です。
俺の親父は物静かな人だった。
言い方悪いけど、ほとんど会話しない変な人。
しかも究極に変なのが、家でも外でも手袋をしている。
春夏秋冬いつでも手袋をしている。
どこで買ったやら、肘まである長い手袋を愛用してんだ。
小さい時から「悪趣味だなぁ…気持ち悪っ」と思っていた。
小学校の授業参観も手袋をしていた。
それを見たクラスの子が
「お前のお父さんさぁ、なんでいっつも手袋してんだよww」
「キモイんだけどw死体の解剖でもすんのかよww」
俺は当然のごとくイジメられるようになった。
そんなのもあって、どんなに寒くても絶対手袋をしなかった。
というか、できなかった。
中学の終わりから俺は徐々に壊れ始めた。
しかし親父は相変わらず一年中手袋。
今までは見て見ぬふりをしてきたが
高校生になって初めて出来た彼女に
「お父さんなんで手袋してんの?挨拶くらいしかしてくれないしなんか怖いな…」
と言われ、ついに我慢の糸が切れた。
仕事から帰った親父に
「おいクソ親父!てめぇなんでいつも手袋してんだよ!気持ち悪いんだよ!!」
「小学校の時からずっとてめぇのせいでいじめられてきたんだぞ!」
「あとなんでいつも黙ってんだ!マジキモイわ死ねや!!!」
親父は一言も反論せずに
「申し訳ない。俺のせいで迷惑かけて。本当にゴメン…」
とだけ言い、涙を浮かべていた。
「謝って済むかよ!もう二度と顔見たくない!」
そう言って俺は家を飛び出した。
30分くらい街を彷徨ったが、急に寂しくなった俺は家に帰った。
玄関で母親が待っていた。
冷静になった俺は、母親からすべてを聞いた。
俺が3歳の頃、何気なく触った鍋の熱湯を頭からかぶりそうになって
近くにいた親父が、素手で熱湯を受け止めてくれたこと。
俺が怖がらないように、ケロイド状になった両腕を手袋で隠し続けてたこと。
(ちなみに俺も火傷したそうだが、幸い痕は残らなかった。)
後遺症のせいで、当時働いていた技術職を捨てざるを得なかったこと。
元々おしゃべりだった親父が「おしゃべりだと、何かで辛い時に子供をかばったせいにしてしまうから」
と、わざと無口に徹してきたこと。
俺は涙が止まらなかった。
全身の水分が流れ出すくらい泣いた。
今までずっと何でも親父のせいにしてきた自分が愚かだったと猛省した。
俺のせいで色んなものを失ってしまったのに。
それから俺は、学校に行きながらバイトを始めた。
そして初めての給料でオーダーメイドの本革の手袋をプレゼントした。
ほとんど給料飛んだけどな。
親父の顔をくしゃくしゃにして泣き笑う姿は今でも忘れない。
現在俺は社会人として頑張っている。
こっそり貯金をして、皮膚移植の勉強や準備をしている。
もちろん毎月手袋を贈ることは欠かしていない。
子供はしょうがないにしろこの彼女ってのはクソだな